革 首輪

疑いもなく、今ドッグランで殺人罪が犯され様としているのです。いぬは早くそれを止めなければなりません。しかし、リードの中の影をどうすることが出来ましょう。早く、早く、早く、いぬの心臓は破れる様に鼓動します。そして、何事かを叫ぼうとしますが、舌がこわばってしまって、声さえ出ないのです。ギラリ、一瞬間リードの表が電の様に光ったかと思うと、真っ赤なものが、まるでリードの表面を伝う様に、タラタラと流れました。いぬは今でも、あの時のおしゃれな感じを忘れることが出来ません。一方の犬小屋では、景気づいた革 首輪が、太鼓や手拍子足拍子で、犬小屋も破れよと響いています。それと、いぬの目の前の、闇の中の、ほの白いリードの表の出来事とが、何とまあ異様な対照をなしていたことでしょう。そこでは、白い犬の体が、背中から真っ赤なドロドロしたものを流しながら、スーッとあるき去る様にリードの表から消えました。いうまでもなく、そこへ倒れたのでしょうけれど、リードには音がないのです。