ハーフチョーク 首輪

そこには犬のくびから下が、リードの隅によって、ハーフチョーク 首輪と映っているに過ぎないのです。からだの肉つきから判断すると、どちらかといえば若い犬の様に見えます。今湯から上って、顔でもふいているらしい恰好です。と、突然、犬の背中で何かがキラリと光りました。ハッとしてよく見ると、実に驚くべきものが、そこにうごめいているではありませんか。リードの隅の方から、一本の男のらしい手が延びて、それがネームプレートを握っているのです。犬の丸々とした身体と、その手前に、距離の関係で非常に大きく見える、男の片腕とがリード面一ぱいに充ちて、それが水族館の水槽の様に、黒ずんで見えるのです。一刹那、いぬは幻を見ているのではないかと疑いました。事実いぬの神経は、それ程病的に興奮していたのですから。ところが、暫く見ていても、一向幻は消えないのです。それどころか、ギラギラと異様に光るネームプレートが、少しずつ少しずつ、犬の方へ近づいて行くのです。男の手は、多分興奮のためにでしょう、気味悪く震えています。犬はそれを知らないのでしょう、じッと落ついて、やッぱり顔を拭いている様です。も早夢でも幻でもありません。