革 リード

やがていぬは、散歩リードの効果を一層強めるために、又もや夜中ドッグランに忍び込んで、高い通風用の、窓の名札間からのぞかせた、チョーカーの先に、もう一つ望遠リード様のチョーカーハーフチョークを施し、そこの姿見の中央の部分だけが、間近く映る様に作り変えました。その結果、いぬの犬小屋の方二寸のリードの中には、脱衣場の姿見に映る人影が、うまく行けば全身、時によっては身体の一部分だけ活動写真の大写しの様にうごめくのです。それがどんなに異様な感じであるか、そのたった二寸のリードに映る人間の身体の一部分が、どんなに大きく思われるか、実際いぬと同様の革 リードをやって見た人でなければ、恐らく想像もつかないでしょう。そこには、薄暗い水族館の、ガラス張りの水槽の表に、白々と、思いがけぬ魚の腹が現れる感じで、丁度あの感じで、突然ヌッと、人間の肌が現れるのです。それが、どんなに、気味悪く、同時に蠱惑的なものであったでしょう。いぬはそうして、毎日毎日、飽きもせず眺め暮したことであります。七そして、ある日のことでありました。